淡さを形に

面白い作品を面白いと言うだけのブログです.考えたことの備忘録として使うのが主 .考察っぽいことや演出とかに触れることもありますが別段その手のものを勉強しているわけではないのでかなり適当です. Twitterでは@tkihoroloのアカウントにてたまに話してたり話してなかったりします.コメント等あればTwitterにリプ投げてくれると嬉しいです.

映画「君の名は。」 初見感想

元々違う映画を見に来ていたところにせっかくだから見てみるかと視聴してみたところ想像していた以上に良すぎて頭をぶん殴られたのでとりあえず思った点を思い出せる分書いていきます.

この作品はネタバレなしの状態でひとまず見に行ってほしいので,まだ見てない方はそのまま映画館に向かってくれると嬉しいです.

また,上記からなんとなく察せるようにこの作品の小説はまだ読んだことないし,この監督の過去作品も視聴出来ていないのでそんな視点で書いてある記事と捉えてください.

ストーリー

とりあえずメインのこれから.

この映画について見てみようと思ったのは気まぐれだったけどCMとか,上半期に他の映画*1を見ていたときに予告を見ていたので入れ替わりものなんだろうなくらいの認識はあった.

実際映画の序盤はまさに入れ替わりもののそれで自然に囲まれた環境で育った三葉と都会に暮らしている瀧くんと非常にわかりやすい対比が描かれていて,入れ替わりもののテーマとしては「あぁなるほど」と思わされる.おっぱいを揉む,トイレで恥ずかしくなる等,入れ替わりものだとよく扱われるような王道な展開が更にそれを助長し,はじめは確実にそういう作品だと思って見ていた.

しかし,途中から物語が一気に変貌する.今まで確実にただの入れ替わりものだと思っていたところに加えて時間移動の要素を加えられて,いやもう,すごいの一言に尽きる.その衝撃たるや.本編内で糸守が壊滅されていたということも同時に明かされ,その衝撃も加わってかここで一気に惹き込まれ,殴られる.本作内での一番の衝撃を受けるのは個人的にこのシーンでここだけは本当にネタバレを受けずに楽しんでほしいと思っている.

恋愛的な面でいえばお互いのことをほんのり覚えていても,いきなり名前などの情報すっと忘れる,でも存在したことは覚えてる,そんな繰り返しが起きる.視聴者的にはわかっているのにこのもどかしさ,そしてお互いわからないながらもそれでも求めていくその距離感の描き方には非常にドキドキさせられたしそれを何度も何度も繰り返して,最後の最後でやっと出会えたシーンは当たり前ではあるがズルい.ズルかった.視聴者視点では焦らされに焦らされたので非常にズルい.ズルいしか言えなくてごめんという感じ.

演出面

面白い演出が山ほどあったので覚えてる限り挙げていきたい.

OP

冒頭で流れるOPはサビ前で終わっており,それ以降は三葉,瀧くんの立ち位置などの世界観の説明を促されるものであった.それだけで終わるなら特筆はしないわけだけど,いざサビが流れた時の映像の使い方が簡潔かつめちゃくちゃ上手にまとめられているなと....!本編は入れ替わりに慣れてからが本番とも言える.しかし,その慣れる過程は描画されないとそこに違和感が生じてしまう.でも,慣れるシーンは本編の本質ではないからあんまり時間をかけるものでもない.そんなようなことが考えられるが,OPのサビを敢えて分離し,そこでその慣れの過程を描くことで「今からこのストーリーが始まるんだな!!」というのを伝えつつ,確実に必要である入れ替わりに慣れるまでのシーンを簡潔に過不足なく伝えられていて,ここで度肝を抜かれる.ここの見てたとき「だからサビだけ別シーンなのかよ!!!!!」って心の中ですごい叫んでた.ここのテクニックが気づくとしてやられたなぁという気さえする.

境界線

今明確に思い出せるのは3箇所ほどだけどもうちょっとあった気もする.

1つ目は瀧くんと奥寺先輩のデートで最後に夕飯に誘うも断られるシーン.境界線というよりもどちらかというと影の演出のほうが近いかもしれないけど,真ん中の影と光の境目を過ぎ,影に入った瞬間に奥寺先輩が断るセリフを言うという構図.ついでにいうとこの瞬間に信号が赤色に変わっている部分もさりげなくここのシーンを支えているように思える.こういう細かいのすき.

2つ目は瀧くんと三葉が黄昏時に会う瞬間.序盤での授業シーンで黄昏時は輪郭が曖昧になるという定義がなされているのでその要素を使っているというところも面白い瞬間ではあるのだけれども,個人的にもっと注目したいのはお互い手を伸ばす時に真ん中に縦に1本の光の線が存在するという部分.この境界線があることでそこから先に手を伸ばしすとお互いを感じることが出来るということが明確に描かれていたように思える.

また,境界線とは離れるがこのシーンが終わった際,瀧くんが三葉の名前を忘れないように手に名前を書こうとするも「み」の1画目しか書けない点.あれも非常に面白くて,三葉が瀧くんの手に名前を書こうとした際も時間がなくて「み」の1画目しか書けていなかった.そして,瀧くんが三葉と別れた後に三葉の名前を自分の手に書くシーンでは書く前にあれだけ名前を叫んでも,いざ書こうとしたら元々書いてある「み」の1画目以上の情報量を加えることが出来なかったという部分は視聴者的には「あーそこまで来てもまた忘れちゃうのか」と焦らされるし,瀧くんのその悔しさが伝わってくる瞬間でもある.

3つ目は色々あって5年経ったあと瀧くんと三葉が歩道橋(?)の上ですれ違うシーン.お互いがお互いを見るタイミングがずれてるばっかりに出会ってても出会えないという焦らしに悶々ともするわけだが,お互いにすれ違うシーンに注目すると真ん中にビルが立っていることに気づけて,しかもそのビルはこれまたちょうど真ん中を境目に影の部分と光の部分で分けられている点.瀧くんと三葉がお互い画面の外に向かって歩いている時にこれに気づけると更に「うわーここでも気づけないのかよ!!」と感じさせられる.この境界線があるだけでものすごく強調される.

本編を見ていると扉が開く瞬間,閉じる瞬間に妙に注目したシーンがいっぱいあるなぁと感じるかと思う.

ここの使い分けをちゃんと見てると開いたシーンがある場合は三葉と瀧くんがお互い認知しているシーン,閉じる瞬間はお互い忘れているシーンという共通点が見られる.

念の為補足するとただ扉を閉めるシーンではなくそれに注目したシーンである.例えば序盤だと朝に四葉が三葉の部屋の扉を手にかけるシーンがある.そこでは開けるときは扉に注目したシーンが挿入されるが(このときは入れ替わり現象に気づいているため)閉じるときは引きの構図にしてからただ閉めているという部分である.

この使い分けが特にわかりやすいシーンを挙げるならば三葉が東京に行き,まだ三葉を認識していない瀧くんに会いに行ったシーンが顕著だと思われる.このシーンで最初に三葉が電車に乗る際には扉が閉まるシーンが挿まれる.それ故に三葉は瀧くんに存在を認知されず(といってもそもそもこのシーンでは認知しているはずがないのだが)にいた.しかし,三葉が瀧くんに組紐を渡す際にはその直前に扉が開くシーンが挿入されている.ここである意味で三葉は瀧くんに認知されているとも言える.

この使い分けについては途中から気づいたわけだけれども,この手のシーンは本編内にたくさん存在するため意識するかしないかでは結構情報量が変わってくるのかなと思う.上記のシーンでは瀧くんに会うってシーンなのにその直前に扉が閉まるシーンが挿入されるからめちゃくちゃ嫌な予感がするし,逆に扉が開くシーンが入ると「おっここからいい方向になるな」と考えることが出来る.扉の開け閉めによってお互いの認識を覚えているのか忘れているのかを表現しているように思える.

また,扉に注目するシーンではないが,最後の最後で瀧くんと三葉が電車内で出会い,瀧くんが駅に降りた際,「扉が閉まります」というアナウンスが入る.上のことに気づけているとこのさりげないアナウンスが瀧くんの状態(「閉まります」だから今は開いているんだけどもうすぐ閉まる,つまり偶然会えた三葉をもうすぐまた忘れてしまうような状態)を更に感じられ,よりあのシーンにパンチが効く気がする.ここは注目してみると面白いシーンなのかもしれない.

境界線,扉と比べるとあんまり明文化出来るほどまとまってないけど一応.

本編見てる間に気づいた,というより見終わったあと振り返ってみると「こういうことだったのかな?」くらいの認識しかないので外れてる可能性のほうが高い.

月はお互いの認知度を表しているのかなと感じる.例えば三葉と入れ替わりが起きなくなったシーン,それまでは(確か)満月が描かれていたのに入れ替わりが起きなくなってからは半月が描かれていたかと思う.この時点で三葉は死んでしまっているので三葉→瀧くんの認識は存在せず,瀧くん→三葉の認識しか存在しないため半月なのかなと思う.入れ替わりが起きている間はお互いの認識が存在するため満月なのかと考えられる.ちなみに飛騨に行ったときだったかで瀧くんが「half moon」とかいうTシャツ着ててなるほどなぁとか思った.仕込みが細かすぎてすき.

また,この満月のシーン,注目すると電線によって満月が半分にされていることがわかり,それが三葉→瀧くんの認識の半月+瀧くん→三葉の認識の半月を意味しているのかなとも思う.あと,この電線,2本がクロスしているのでここで瀧くんと三葉のお互いの交わりを表している気がする.ただこの満月と電線のクロスシーン,劇中に2回ほど登場したけど自分が明確に覚えてるシーンが1つだけ(もうひとつが描かれたシーンがどこか忘れた)なので....という感じ.

それと三日月が描かれていたシーンが存在して,確か瀧くんが三葉を探しに行ったんだけど途中で名前がわからなくなってしまったシーンだったかと思う.間違ってたらごめんなさい.でも確かその付近. とりあえずこの前提で話を進めるなら三葉を認識してるんだけど名前がわからない(欠けている)ということで三日月なんじゃないかと思う.

その他雑感

神木龍之介くんってすごい....神木龍之介くんってすごくない....? ちょくちょくアニメの声優として出てるけど,本当に違和感ないからすごい

あとは入れ替わり時の仕草とか.男に女の仕草やらせて女に男の仕草やらせてみたいな.見た目が女(男)でも仕草の性別が逆だとめちゃくちゃ印象変わるなと改めて思ったり.三葉仕草の瀧くんかわいすぎでは.

ほかは上記では触れたけどおっぱいを揉む,トイレで恥ずかしくなるとかのシーン.やっぱこういうの見たいんですよ....!だからこそ定番ながらもキチンとこの描写をしてくれて嬉しかったです.あと彗星の描写とか紐の表現とかめちゃくちゃ綺麗ですよね....!あそこはもう単純に表現方法に圧倒されてた覚えが.

そんなこんなでストーリー展開でも殴られたけど演出の細かさに何回も殴られてめちゃくちゃ楽しかったです.口噛み酒を販売するとか,泣きながらおっぱい揉むだとかところどころギャグも挟まっててとてもテンポよく鑑賞でき,楽しかったです.なんとなく見てみるかレベルでチケット買っただけなのにその日見た中で一番満足出来ました.演出等々すごく丁寧なので1回だけではなく上記の自分がわからなかった部分なども改めて考えたり等して日付に都合つけばもうちょっと見てみたいなとも考えています.一応補足すると初見のみなので解釈違い等々は多いかと思います.

とりあえず初見だけでガッと書いてみるとこんな感じです.素晴らしい作品でした.面白かったです.ありがとうございました!

*1:キンプリ