淡さを形に

面白い作品を面白いと言うだけのブログです.考えたことの備忘録として使うのが主 .考察っぽいことや演出とかに触れることもありますが別段その手のものを勉強しているわけではないのでかなり適当です. Twitterでは@tkihoroloのアカウントにてたまに話してたり話してなかったりします.コメント等あればTwitterにリプ投げてくれると嬉しいです.

Trust meから見える「アイドル」の想い

元々この楽曲がとても好きだったんですけど,先日のデレステのイベントで更にこの曲に魅力を感じたのでこの記事を書くに至りました.

この曲はそもそもどういう曲なのか,どこが好きなのかについてが中心です.また,ある程度コミュにも触れるのでご了承ください.

目次

「Trust me」は誰に対して?

歌詞にもある「Trust me」という言葉は誰に対しての投げかけになっているのか,についてです. この辺りは2通りの考え方があるのかな,と思ったので各々について述べていきます.

総選挙曲としての在り方

こちらはシンプルに「アイドルからプロデューサーへ」という構図についてです.自分が最初に解釈したものです.

この曲は1番を目指すアイドルの姿が描かれています.これは 一番に見据えるものは 栄光に満ちている世界 という歌詞や I will be everyone's target という歌詞を読み取れるでしょう.

ではなぜこの構図が生まれるのか.これこそが「総選挙曲であるから」という話に繋がります.

シンデレラガールズでは総選挙と呼ばれるイベントが行われます.ここで1位に輝いたアイドルは「シンデレラガール」という称号と共にその座に就くことができます.ではその総選挙でどうやって勝ち上がることができるのか.

もちろんこれは「アイドル自身のポテンシャル」というのもあるでしょう.だけどこれだけで決まるわけではありません.総選挙であって人気投票ではないんです.総選挙に勝ち上がるためには「プロデューサー」という存在が必要となります.プロデューサーがアイドルを売り込んでこそ票を集めることができる.

もちろんアイドルにプロデューサーが必要であることは疑いようもありません.しかし,シンデレラガールズにおいて一層「プロデューサー」という立ち位置が重要となります.

この構図は第7回シンデレラガール総選挙だと特にわかりやすいのではないでしょうか.この回で1位に輝いた安部菜々というアイドルは第"7"回と"菜々"という言葉を掛けたプロデューサーによるアピールが盛んでとても勢いがついていたアイドルです.ですが安部菜々の第6回の結果をみると12位という結果です.純粋にこの順位を見ただけでは「あ,これは次1位になれるな」と判断することは出来ません.しかし,それを成し遂げたのが第7回の「プロデューサー」の応援によるものです.だからこそ投票数を集めることができたし,1位に輝くことができた.

このようにシンデレラガールズにおいて「シンデレラガール」に輝くためには「プロデューサー」の力が必要となります.そこで2人で歩むことができてこそようやくアイドルの道を往くことができます.

2人で歩む,すなわちお互いがお互いを信頼しきっていないと歩んでいくことはできません.プロデューサーは自分の担当がアイドルが1番魅力的だと信じきってこそ動くし,アイドルは「自分はこんなに素敵なアイドルだ」とプロデューサーに信頼されるように努力をする.だからこその「Trust me」という歌詞に繋がっていくのだと思っています.私はもっと高みに行きたい,最前線に立ち続けたい,今よりも先に走っていきたい,だからこそ努力をしてきたし素敵なアイドルになれるように頑張ってきた.そんな「素敵なアイドル」になるために一緒に歩んできた「プロデューサー」にもっと高みを目指すために,誰よりも「私を信じてついてきてほしい」と伝える,そんな楽曲がTrust meだと考えています.

デレステのコミュから考えると

では,デレステのコミュを見てみるとプロデューサーとアイドルの構図で強く描かれていたか,というとそうではありませんでした.もちろん,EDコミュではその解釈もできるようなセリフも添えられていたので,先程の考え方は1つの解釈としてできるように成り立っているということは考えられます.とはいえコミュでフォーカスを当てられていたのは上記とはもう少し異なる場所だったかと思います.その辺りについてここでは述べていきます.

結論から書くに「自分の個性(=好き)を信じる自分」が描かれていたのかな,と思っています.

なぜ「個性」を描く必要があるのか.それはシンデレラガールズにおいて「個性」がテーマとなっているからだと思っています.例えばお願い!シンデレラMy Only Star とあるように,BEYOND THE STARLIGHTで この世界 ただ一つの MY STAR とあるように,シンデレラガールズにおいて「個性」というテーマは様々な場所で描かれます.アニメの2クール目なんかも顕著だったかと思います.自分自身の力で挑戦していく(= 自分が「やりたい」と思えることを進んでいく)姿がよく描かれていたかと思います(17話の城ヶ崎姉妹の描写なんかは更にわかりやすいと思っている).つまり,「個性」=「好き」でもあります.

つまり,「個性」を大切にすることで自分自身が輝けるという構図がシンデレラガールズには存在しています.そんなテーマがデレステのTrust meのコミュでは描かれていたのだと思います.

今回のコミュでは登場していた5人のアイドルの「個性」が全て描かれていました.茄子さんの「幸運」,志希の「天才・ギフテッド」,南条光ちゃんの「ヒーロー・正義の味方」,日菜子の「妄想」,そしてまゆの「Pへの好意」.これらの「個性」はこのコミュではすべて否定されていません.「個性 = 好き」は尊重されるし,自分自身で信じていく構図が多く描かれていました.

これは4話のコミュなんかがいい例だと思っています.

第4話ではレッスンに出ていない志希を光が探しにいく場面が描かれます.もうダンスが完璧な志希はレッスンをサボり,失踪をしたわけですが,光に見つかってしまいます.光は「本当にダンスが完璧ならそれで良い」と言いましたが,志希はそれを難なくこなします.これについて光は次のように称しています.

天才ってすごいな! じゃあ明日は大丈夫そうだ
(中略)
ギフテッドでジーニアスとか、ものすごくカッコいいのに!

光はレッスンをサボる志希に対して「でもやっぱりサボるのはなー」と食い下がることはありません.むしろその天才さを尊重する形になっています.「個性」を否定することは絶対にありません.また,その「個性 = 好き」を無理強いしない構図も4話では描かれています.

光「ほら、たまに助けてくれる先輩ヒーロー役でいいからさ.....!」
志希「だから、No Thanksだってー。それとも誰かのしたくないことを無理強いするのが、光ちゃんのセーギなのかなー?」

嫌と言っているものは矯正させない.これも「個性」の尊重だと捉えられます.

また,志希は光に対して「どうしてヒーローになりたいのか」と問いかけます.その問に対して,光は次のように返します.

f:id:tkihorolo:20181228175640p:plain

これに対して志希は「ま、そう言い切れるならいーんじゃない?」と返しています.その「個性」を否定はしません.同時に光は自分の「個性(=好き)」を信じている構図がここからも読み取れます.また,これらの構図は5話のまゆと日菜子の会話からも同じことが言えるでしょう.

以上のコミュより,この曲からは「自分の好き,自分の好きを信じる自分」という姿も描かれているのだと思っています.自分の「好き」があるからこそ前を向いて先に進めるし,自分の「好き」があるからこそ落ち込んでしまったときも立ち上がることができる.だからこそ「自分の好きを信じて進む女の子」がここから読み取れるのではないかと,考えています.

なぜこのテイストに仕上がっているのか

Trust me,かなり自分は好きな楽曲ですが,クセが強いという意見にも納得できます.でも自分はその「クセ」こそがこのテーマにはピッタリだと思っていますし,だからこそ大好きです.

この楽曲で描かれていることは一貫して「一番を目指すアイドルの姿」しかありません.誰よりも高みを目指すし,どんなときもストイックに妥協をせず進んでいく姿がここには描かれています.個人的には「少しでも わずかでも」という短いフレーズから「順調に成長できるわけではないときももちろんあるし,失敗することもあるだろうけど,そんなときでも進む貪欲さを忘れない」という面が想像できるのが大好きです.

ではここまで成長に貪欲な楽曲が今まで存在したか,というと自分はあまり思い浮かぶ曲がありません.BEYOND THE STARLIGHTなんかは「一番を目指す」という面ではTrust meとは類似していますが,「成長への貪欲さ」のような泥臭さが感じるものではありません.1番を目指すという「キラキラした気持ち」の方にフォーカスを当てられていて,「何がなんでも1番になってやる」というアツさだったり,成長を目指す中での揺れる感情を描いていません.

Trust meという楽曲はそのタイトルからもわかるように「Trust me」という言葉に全てが凝縮されています.「私を信じろ」.これを言うだけの自信,覚悟,そして相応の努力がないと決して言えない言葉です.言わずもがなシンデレラガールズには魅力的なアイドルがたくさんいるなかで「私というアイドルを選んで,信じてついてこい」と言えるだけの強さがこの楽曲には詰まっています.

だからこそこの楽曲では「Trust me」と言えるだけの自信の裏付けとなる「泥臭い努力とその想い」を描いているのだと思っています.「やるなら目指せよ」といったいつものシンデレラガールズでは考えられない荒い言葉がチョイスされている.だけどそれによってむしろこれを歌うアイドルの「全力の想い」が描かれる.そこには「一番になってやる」という純然たる気持ちが存在している.

そしてこの想いを支えるのが今回のラップだったり激しめのサウンドなのかな,と感じています.音楽的なところは詳しくわからないけど,ラップという「言葉」を重視した手法を選択したのもアイドルの「泥臭い想い」を描くためだと思っているし,激しい楽曲だからこそ「絶対に一番になる」という強い想いが更にエッジを効かせているのだと捉えました.

残りの雑多な感想

要はここすきポイントです.

さて,この楽曲が「一番を目指すアイドル」を描いているということはここまでに述べました.でも「なんで一番になりたいのか」という理由まではこの楽曲では語られていません.「純粋に『一番』になりたいから」,「一番になることで成し遂げたいことがある」,「一番になることで示したいものがある」,1番になる理由はアイドルによって様々です.なんなら,その担当をするプロデューサー毎にもそれぞれの物語があると思っています.

例えば僕であれば担当アイドルとして「佐久間まゆ」を思い浮かべますし,その理由として永遠のキズナ特訓後が出てきます.しかし,同じ佐久間まゆ担当Pであっても,その人にとっての「まゆが1番を目指す理由」は異なってくると思いますし,もちろん担当アイドルが異なれば更に変わってきます.でも,この解釈の余地が大きく残されている部分がこの楽曲の素敵な点だと思っています.佐久間まゆがTrust meを歌うことで見える構図については下記記事にて書いたので興味のある方は.

tkihorolo.hateblo.jp

アイドルへの考え方はそれこそアイドルの数とプロデューサーの数だけ存在していると思っています.それは一緒に過ごしてきた時間もあるだろうし,同じセリフを受けた際の捉え方だったりによって「そのアイドルへの想い」が異なるからだと考えています.だからこそ,「一番を目指す担当アイドル」が描かれたときに,そのアイドルが「何を思って1番になりたいのか」はプロデューサーによって違います.そういった構図こそが自分は「アイドルマスター」だと思っていますし,ここの解釈を自由にしている楽曲があることがとても嬉しいです.

というのと,純粋にアイドルの「高みを目指す」という気持ちをここまでフィーチャーしてくれる楽曲を作ってくれたことがとても嬉しいです.アイドルコンテンツ,(それはそれで好きとはいえ)キラキラした気持ちだけしか描かれないことが多いんだけど,「1番になりたいという気持ち」だけはどうしてもキラキラした表現だけじゃ描けないと自分が感じていました.だからこそ,シンデレラガールズにこれだけ攻める音楽が来てくれたのは最高でした.大好きです.

それにアイドルがプロデューサーに「私を信じてついてこい」って言ってくれるのがめちゃめちゃ良いんですよね.Take me ☆ Take youのようにアイドルとプロデューサーはお互いがお互いを引っ張っていくという構図はシンデレラガールズにおいてもちろんあるんだけど,やっぱりプロデューサーがアイドルを引っ張っていくという構図がどうも多かった気がして.確かにこの構図は大事で,そもそもプロデューサーがいない限りその子はアイドルになれないわけなんだけど,逆の構図が描かれることって早々なかった気がするんですよね.そこでこの「Trust me」という楽曲でむしろアイドルから「1番の景色を見せてやるから私を信じてついてこい」と言ってくれる構図をぶつけてくれたというのがかなり好きな点です.

「Trust me」と自信を持って言えるほどアイドルは努力しているし,それを言えるだけの信頼関係がある.これ,すごく面白いですよね.「Trust me」と言うためにはまずそれを言えるだけの「信頼関係」があるんですよ.最初からこんな言葉なんて言えない.あなたが見つけてくれた,あなたが育ててくれた私だからこそ私は1番になり得るアイドルだし,そんな私をほかでもないあなたに信じてほしい.この一言からここまでを読み取れる楽曲,本当に最高なんですよね.だからこそこれは「担当アイドルが1番魅力的だと自信を持って総選挙中にアピールしてきたプロデューサー」への歌だと自分は強く感じました.「あなたが全力で信じてくれたアイドル,それこそが私だしそんな私をこれからも信じてほしい」とお互いに誓う構図がここから感じられるのかな,と思います.「一緒に歩いていこう あの果てしない道の先へと」なんて歌詞からもこの辺りは読み取れそうですね.

終わりに

発売当初からこの楽曲は大好きだったんですけど,デレステをコミュを見て更に好きになっちゃったのでその勢いのままこの記事を書き上げました.やっぱりこのTrust meって曲,大好きなんですよね.「総選挙曲」というポジションを担っているだけあってメッセージ性がかなり強い.

以上で本記事を終了します.ここまで読んでくださった方はありがとうございました.

追記 (2018/12/30)

すごくありがたいことに,この記事を受けて更にTrust meの記事を執筆してくださった方がいました.こちらの記事ではそれこそイベントコミュから見える「自分自身に対するTrust me」だったり,(本記事でいうところの)Take me ☆ Take youの「Take you」にあたるという結論をもっと違うアプローチから書かれています.本記事では掘り下げられなかったところまで述べられているのでご興味ある方は一読をおすすめします.

think-airi.hateblo.jp