淡さを形に

面白い作品を面白いと言うだけのブログです. たまに考察っぽいことや演出とかに触れることもありますが別段その手のものを勉強しているわけではないのでかなり適当です. Twitterでは@tkihoroloのアカウントにてたまに話してたり話してなかったりします. ブログのアイコンはAnzuChang!ジェネレータ様からです.

ポッピンQ 感想

1月20日くらいに友人に誘われ観賞したところかなり好みだったので「なんで公開当日に見なかったんだ」と後悔した人の感想記事です.

とりあえずそれ以降の空いてる日に急いで3回くらい見たくらいなのとまだパンフレットとポッピンドロップが読めてないのでその点はご了承ください.

また,ネタバレなしの感想とありの感想とで分けています.気になっているかたは延長とかされない限り本当にあと(この記事の公開日から)数日とかしか残ってないので一刻も早く観て頂けると嬉しいです.

ネタバレなしの感想

とりあえず公式サイトのあらすじページを載せておきます.

www.popin-q.com

本作品の主人公となるのが卒業式を控えた15歳の中学3年生5人.住んでいる地域も、家庭環境も違うけれど共通点があり,それはみななにかした悩みを持っているというところ.

陸上で不本意な成績を残してしまった,コンクールから逃げ出してしまった,両親が勧める合気道も柔道もどちらか一択に選べないなど悩みは様々だけれど心にどこかわだかまりが残っている状態です.

時間というのは一方的に流れるばかりで卒業式の日になれば未練があろうが否応がなしに学校を卒業することになります.でも皆,心にわだかまりがあってこのままでは前に進める自信がありません.そんな心境の中で突然迷い込んだ「時の谷」という場所.その時の谷では危機に瀕していて「心をひとつにしてダンスを踊ることで「時の谷」を守ることができ、元の世界に戻ることもできる」と告げられます

ざっとした導入はこんな感じです.「心をひとつにしてダンスをすれば元の世界に戻れる」ということは言い換えれば,元の世界に戻らないという選択肢もあるということ.つまり心にわだかまりを抱えたまま卒業式に出ずにここに残ってもいいということ.中学校の卒業という子供から大人への階段をまた一歩進む時期,それをしてもいいししなくてもいいという選択肢が生まれるわけです.そんな中で5人は別世界での冒険を通じてどんなことを感じ,どんな決断をするのかというのがこの作品のテーマとなっています.

純粋に物語の展開だけを見るならば大きく二転三転もして驚く,というわけではなく最初からもう「みんなで心を1つにしてダンスを踊る」と目的が決まってるのでそこから逸れることはありません.そういう意味では他の方の感想でも見るように確かに「あっさりしすぎ」とか「ご都合主義」とか「ひねりがそこまであるわけではない」などなど気持ちは確かにわからんでもないというのは正直なところです.

手放しで全部良かった!!!と言えるわけではありませんし,尺の問題なのか主人公以外の問題解決シーンを深く扱っていなかったり,冒険の過程が省略されたりとやっぱり多少気になる点はあります.

それでも微妙だと思った点,好きだった点を全部加味して考えてみるとポッピンQはかなり刺さりましたし,だからこそこうやって感想を書きたいなとも思いました.

ポッピンQは細かなセリフが随所随所に活かされてる緻密性が魅力だなと感じています.こういうテーマ上,やはり大人のポジションに立っているキャラのセリフ,子供のポジションに立っているキャラのセリフで対比がよく行われていて,前半に発した何気ない大人のセリフが後半の展開の裏付けになっていたりと細かい言葉選びに気にするほど気にするほど非常に面白くなっていきます.自分が一気にポッピンQに惹かれたのもここが大きいと思っています.

そして何より,アツい.ポッピンQにはダンスだけではなく戦闘シーンが存在します.絵柄がかなりファンタジーでどちらかというと所謂女児向けアニメに近いものになっていますが,これに反して少年マンガの王道展開,カッコよく見えるポイントが戦闘シーンの随所に散りばめられている.これがとにかく良い.アツすぎて泣いた点があったくらいにはよかったです.もちろん戦闘がメインのアニメというわけではないので戦闘シーンはそれほど多くはないですがやはり非常に良いポイントとして挙げていいのかなと思います.

ダンスに関してはもう言わずもがなです.そもそものテーマにダンスがあるようにその点に関してはクオリティが高かったです.女の子かわいいよね.あさひちゃんがすきです.

公式で本編冒頭15分程が公開されているので興味が出てきた人とかは是非見てください.OPにダンスシーンもあるので….!ほんとに…!是非….!

youtu.be

ネタバレありの感想

冒頭(時の谷に着くまで)

ここのシーンの大きな役割はというと5人の,特に伊純が中学を卒業するにあたってどんな悩みがあるのかというのを定義づけています.それと同時にこの作品内で登場する数少ない明確に「大人」である人物がどういうセリフを言っているのか,そして「子供」である伊純がそれをどう思っているかという点も注目すべきだと思います.

まず冒頭朝の会話について.ここでは伊純が中3の「子供」であるという定義づけのシーンとも言えるでしょう.

伊純「お母さん.あたしまだ東京に行くって決めちゃあせんき」

伊純母「伊純!いい加減に――あ,アンタ!向こうの家は狭いき.荷物は減らしてって言われたろ」

伊純父「ほら,伊純が変なこと言うき,こっちに飛び火したやいか」

伊純「大人は勝手やね!東京で会社やるき,みんなで行こうって.振り回されるこっちの身にもなってみーや.人の気も知らんで.あたしはここを離れんきね!」

伊純父「大丈夫かにゃあ伊純は」

伊純母「大丈夫よえ.この間まで東京の高校に行けるってよろこんどっちゃき.ちょっと心残りがあるばーで」

「大人は勝手やね」というセリフは「東京に行くに際して振り回されてる」+「関係ないのに父親に自分のせいにされた」というセリフが起因しているのは置いておくとして,敢えて「大人は」と言っているあたりに伊純が(設定だけではなく)セリフとして「子供」であるという関係が明確になっています.

母親のセリフから1度は伊純が東京に行けることを喜んでいたことがわかりますが,本編の展開を考えると恐らく陸上でナナに負けた事を境にしているのかなと思います.セリフ内にある心残りもここにあたるでしょう.

伊純はナナを超えるタイムを出すために日々練習するわけですが芳しい結果が中々出なく陸上をやめることすらも検討しはじめます.また更衣室の会話では後輩に「足の怪我さえ治ればいいタイムが出ますよ」と言われるものの,本当は嘘であるためこのシーンで伊純が口を開くことはありません.そのこともあり更衣室から出る瞬間にやっと口を開くものの「卒業式にも東京にも行かない」というものでした.

この心残りがあるままでは伊純にとって卒業は「悲しい通過点」でしかなくなってしまいます.それ故にここでは卒業と同意義である東京にも行かないというセリフになり,「悲しい通過点」である卒業式に出ないことである種の現実逃避をしているのかなと考えられます.これこそ「前に進む自信がない(=大人になる階段の一歩である卒業式に出ない)」ということにつながると言えるでしょう.

この次のシーンで伊純が埠頭に向かって走っている間に他4人の心のわだかまりが描かれるシーンが挿入されます.その中で特に注目したいのが沙紀で,ここで「悪い子」と言われているのは今のままの沙紀では本編最後に登場する「悪役」の黒沙紀と同じになってしまうからだと思われます.また,ここのセリフが「落書きは悪いことだよね」じゃなくて「落書きは悪い"子"のすることだよね」となっているのも細かいながらも面白い点で,黒沙紀が悪い「大人」に対して,落書きをしている沙紀は悪い「子」という対比がさり気なくされているのかなとか.

埠頭から家に帰ってきた際に次のようなカットがありました.

f:id:tkihorolo:20170129204106p:plain

これに関しては単純にだらしない性格描写と取るか,そのだらしなさを子供っぽさの表現として捉えるかちょっと悩むところではありますが,その性格を描写したところでこの後の展開に関わってくるかと言われるとしないし後者の捉え方でいいのかなという気はします.

さて,ここでの伊純夫婦の会話を抜粋します.

伊純母「ちょっと!あなた,ファスナーお願い」

伊純父「いくで~あぁこりゃ無茶ぜぇ.諦めてはよ片付けようや」

伊純母「あーあ,若い頃に戻れるがやったら悪魔に魂売るのに」

ここのでのさり気なく出てくる母親のセリフが結構重要で「若さ」というのは「悪魔に魂を売ってもいいほど」の価値があると作中で明言されていることです.非常に細かいセリフながらも何故黒沙紀が永遠に今をやり直すことに固執するのか,という点が端的に裏付けされています.軽い言葉ながらもポッピンQ内ではかなり重要なセリフであったと言えるでしょう.

この次のシーンでおじいちゃんとの会話があります.

おじいちゃん「人には勝負せなぁいかんときがあるき」

伊純「意味わからんし」

おじいちゃんの言葉ですが,今の伊純には理解が出来ません.大人の言葉が理解出来ないというところからも伊純が子供であるというのが徹底して序盤に描かれています.

ここから学校とは反対の電車に乗り星ヶ浜駅に着くわけですが,自分の理解力不足か後輩からここで「青春って案外短いがですよ」ってメッセージが来る理由が明文化出来ないんですよね….

メッセージ自体は確かにテーマに沿ったものではあるものの,先輩である伊純を呼び戻すためにこのメッセージを打つのか?と考えるとあんまり納得のいく結論が出ませんでした.短いからこそあんまり他所でプラプラ(より道)してると終わっちゃうから早くこっちに戻ってきてくださいねという解釈でいいのでしょうか….そうであるなら本作ではここから時の谷に寄り道するわけですが10日で現実世界の2時間計算なので寄り道しすぎることがなく戻れたということでテーマには沿いそうです.

そしてOPでもあったように伊純も時のカケラを持ったまま定期券をかざすことで時の谷へとワープし,キャッチコピーの「15歳 寄り道 青春もまた、冒険」のとおりPop in Q(uest)(冒険への寄り道)ということで物語が始まります.冒険なら他の単語でもよくないかという気はしますが,Qで時計も一緒に表したかったのかなぁとか.

(ここまでは公開されている映像を見ながら書きましたが,ここから先は記憶で書いてるので割とざっくりとしか書いていません)

レノとの出会い後

レノに「他の時のカケラこのレースをやり直すことが出来る」と持ちかけられて動揺する伊純.そんな中伊純がポコンに「ポッピン族の規律をめんどくさいと思ったりすることはないの?」という質問を投げると「個々が規律を乱してはいけない」みたいな感じの回答をしていました(かなり大雑把にしか会話を覚えていませんが).これに対して伊純は「ポコンは大人だね」と返すわけですが,ここで「個々が規律を乱すこと=子供」という図式を見ることができます. つまり「レースをやり直す」ということをしてしまうのは「子供」であるということに繋がってきます.

そのことを踏まえてレミィと沙紀の救出シーンを考えると伊純はレノに「もう二度とレースをやり直すことは出来なくなるけどいいの?」という問に対してきちんと断った伊純は「子供」から一歩「大人」に近づいた成長シーンであると言えるでしょう.しかし,やり直しを選択しなかったもののレースのタイムに不満があるのは本当のことです.だからこそレノは去り際に伊純を「嘘つきさん」と呼んでいるのではないでしょうか.

めちゃくちゃくだらないこというんですけど,レノが去ったあとメガネも一緒に置いてあったので現実世界に戻ったあとまた買いなおしたんですかね.(小夏ちゃんはメガネと一緒に帰れてた)

時の城侵入

100mを11.88[s]で走り過去にした自分の心残りを精算するシーン.100m走シーン自体は今回置いておくとして,その前にあった会話についてです.

ここで冒頭おじいちゃんのアドバイス「人には勝負せなぁいかんときがあるき」というアドバイスが活かされてくるわけで,ポコンが「もうそろそろ帰ったほうがいい」と言ったときに伊純はこの言葉をポコンに言い放ちます.また,100m前にもこの言葉を使って伊純は勝負することを決めます.

初めてこの言葉を聞いたときには「意味がわからない」という反応でしたが,この言葉を自分の言葉として使い,自分の行動で表していることからもちゃんと理解していることが読み取れます.ここからも伊純がこの冒険の中で成長していることがわかります.

黒沙紀との戦闘

黒沙紀の目的は「永遠の今を繰り返す」こと.ここでまたポコンのセリフを踏まえて考えてみると個々の規律を乱しているという点で見た目こそ大人な黒沙紀もある意味子供であることが読み取れます.説明されているとおり黒沙紀はダンスに背をむけたっきり他人を信用出来なくなった沙紀の未来の姿で,本作でいう大人への一歩を辿る「卒業」が「悲しい通過点」になってしまった沙紀であり,その頃から成長していないと言えるでしょう.

元々5人は卒業に対して心残りがあり「悲しい通過点」として迎えるところでしたが,今回の冒険を通して大人の言葉を段々と自分たちの言葉へと変えていき成長することが出来ました.

つまりここでは「卒業」を「悲しい通過点」ではなく「新しいスタートライン」で迎えようとしている子供と「悲しい通過点」になってしまった大人の戦いであり,これを乗り越えることで5人は本来の意味で「卒業」し成長することが出来ると言えます.また,それと同時に人を信じられなくなってしまった沙紀と人をもう一度信用してもいいと感じた沙紀の対比も行われており,数も5人対1人という構図になっているのでしょう.

戦闘シーンを見てみても黒沙紀が1人の能力で戦っているのに対して(沙紀がこの時能力が出ていないので)4人が個々に戦うのではなく連携プレーで勝利を収めているのもポイントでしょうか.

最後の最後に沙紀の能力が登場するわけですが黒沙紀とは正反対に白い翼なのが「悪い」子から脱却出来た様子が見れてよかったですね.

いざ卒業へ

冒険を通じ成長し,黒沙紀を倒すことで卒業を「悲しい通過点」ではなくした5人.それを示すためか元の世界に戻る際の描写に「階段をのぼる」というカットが挿入されていたのもポイントかと思います.「前に進める自信がなかった」5人もきちんと「大人になる」ことに向けて前を向けたのかなと思います.

元の世界に戻った後も伊純はナナに対してキチンと謝りますし,両親に対しても「気持ちがわかった」と子供から大人へと一歩成長出来たことを伺わせるセリフも聞こえてきます.もちろん伊純だけではなく他の4人も成長したシーンが見られましたし,特に沙紀の「悪い子がする落書き」を自分の手で消していたというのも今回の冒険での成長が顕著に表れていたかと思います.

その他雑感

戦闘シーンがめっちゃ好みというか,能力が初めて明かされるときの伊純の「DASH」むちゃくちゃかっこよくなかったですか???感覚で自分の能力でなにかわかってるからかクラウチングスタートのポーズを取ってるのに,敢えて蒼に能力を尋ねるしたシーンとか!!あそこすごい好きなんですよね.2回目見た時もアツすぎて泣いてました.蒼の情報の可視化能力がファンタジーっぽく表記するんじゃなくて日本語と英語で表記するだけっていうシンプルさが昔あった異能系少年バトルのマンガ的表現に似てて逆に良かったです.あの表示方法がシンプルすぎるが故にむしろアツい.大好き.

戦闘シーンでは各々心残りとしてネックになっていた特徴がむしろ活躍していて(伊純ならダッシュ能力強化,蒼なら情報可視化,小夏なら音符で攻撃とか),やめようかなとか悩んでいても自分のやってきたことは無駄ではなくきちんと肯定されている感じとかは結構好きです.ただ戦闘シーンを入れたんじゃなくて恐らくそういう意図があったのかなぁと感じられるので.

蒼と言えば首を動かすダンスの練習シーンで伊純が出来てなかったときに隣でドヤ顔してるのがめちゃんこかわいかったです.あと初めの走ってダンスの練習してるときに「なんでこんなことしなきゃいけないのよ」って気持ちをルチアに見透かされて説明されてるときの表情とか.あの辺りはかなりすきです.

100m走のシーンはシンプルながらもやっぱり作中で過去の失敗を吹っ切るという大事なシーンであることからも,言葉で多くは語れないものの非常にすきなシーンです.クラウチングスタートが出来るように石が盛り上がってたり.この辺も2回目でも泣いてた気がします.

黒沙紀のセリフはなんというか中学はもうとっくに超えてしまっている身としては中々くるものがありましたね.伊純を15歳のなにもわかってない子と称しているのも,当時はわからなかったけど大人となってわかるあの時の貴重な時間がどれだけほしいのかというのがよく表れていたなぁと思います.武器も時計の針とかも凝ってましたし,沙紀が離れていった際も「私を裏切るものは全て許さない」と黒沙紀が言っていた部分にも「あぁこれは本当に悲しい通過点のまま成長してしまった沙紀なんだな」と顕著に感じさせます.あとここの沙紀の声優を担当してる黒沢ともよさんの演技すごかったですね….!「もう1人で踊るのは嫌なの」ってところとか.演技に惹き込まれます.

おわりに

最後の最後にレノの正体が明かされましたが,伊純達より年上のレノが何故あの場にいて敢えて試練を与えたのか,など気になる点はあるので是非次回作が見れればなと思います.(でも次回作前提じゃなくてとりあえず1本で完結してほしかったという気持ちも同時にありますが)

また,この記事では微妙だと思ったシーンにはあんまり触れていませんが,始めに書いたとおり触れてないだけでやっぱりちょっと気になるシーンはいくつかあります.それを加味した上でも,青春という濃くも短い時間の中,将来に不安を覚えやすい時期の中,中学3年生が卒業をただの通過点ではなく「新しいスタートライン」として始めて成長しはじめる姿を描くというテーマはかなり好きだったので自分は見れて良かったなと思います.細かな部分を追っていてもかなり面白かったので.

とりあえず早くパンフとポッピンドロップを読もうかと思います.

ここまで読んでくださった方はありがとうございました!