淡さを形に

面白い作品を面白いと言うだけのブログです.考えたことの備忘録として使うのが主 .考察っぽいことや演出とかに触れることもありますが別段その手のものを勉強しているわけではないのでかなり適当です. Twitterでは@tkihoroloのアカウントにてたまに話してたり話してなかったりします.コメント等あればTwitterにリプ投げてくれると嬉しいです.

「運命」の言葉から見る佐久間まゆ

先日Twitterでごちゃごちゃ言ってたことをせっかくなのでまとめてみようかなと思ったやつです.

「運命」って言葉の意味を調べると「人間の意志にかかわらず、身にめぐって来る吉凶禍福」なんて出てくるけど佐久間まゆが使う「運命」の意味ってなんだかこことはかなり離れてるよね,なんて話.あとは調べてみるとまゆって永遠のキズナ以降は「運命」って言葉はカード上では言っていなくてそれについての話.

恐らくですが まゆって「運命」って言葉をよく使う気がする って思わない人はこれ読んでも「せやね」で終わります.というか私事ですが今までこれに気づけなかったことがちょっと悔しかったりします.もっと理解を深めような.

目次

Twitterでごちゃごちゃ言ってたやつ

元々Twitterで話してた内容です.本記事で書いたことと(ちょっとは変わってるけど)大体同じだけど念のため.続きはリプ先に繋がってます.

「運命」の使い方から見る佐久間まゆ

「運命」という言葉の(スタンダードな)意味は先述したように「人間の意志にかかわらず、身にめぐって来る吉凶禍福」です.要は「人的な意志に関わらない巡り合わせ」となります.しかし,この意味の「運命」に基づいてまゆとプロデューサーは「運命の相手」であるか,と考えてみると意味から外れるような気がします.確かに出会いは「運命の出会い」と言えるでしょう.とはいえその後はアイドルとプロデューサーという立場であって,(「人的な意志に関わらない巡り合わせ」という意味の運命を用いるなら)「運命の相手」と呼ぶのはかなり無理があります.アイドルとプロデューサーが結ばれるのは一般的にご法度なわけでここから結ばれようとするなら確実に「人的な意志」が関わってきます.

Pと結ばれるためにまゆがした行動としてフィールマイハートでの「最高に魅力的になってあなたを振り向かせる」がとてもわかりやすいでしょうか.トリートオアトリートの「みんなが恋愛していい世界へ変える」も同一と言えるでしょう.ここから言えることとしては最終的に「運命の相手」だった,と結論付けるのではなく「運命の相手」と呼ぶためにまゆは行動しているという点です.

初期頃のまゆが使っていた「運命」にはある種の願掛けだったり不安を払拭させるための意が含まれていたようなようにも感じられますが,最近(というほど最近でもないけど)のまゆは本来の「運命」という意味と異なっていることを理解しつつもそれを言っているきらいがあります.だからこそイリュージョニスタ!では「自称・運命の相手」と呼ぶし,それを本当の「運命の相手」として変えるべく自分を磨き続けて困難を乗り越えようとする女の子が「佐久間まゆであることが考えられます.

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イリュージョニスタ!特訓前 ルームセリフ

(ある意味じゃPとアイドルって関係は結ばれない「運命」とも言えるのでそれをぶち壊して結ばれようとするのは反運命だし[Anti-Destiny]佐久間まゆですよねなんて言って遊んでたけどそれは完全に余談の範疇)

なぜ「運命」という言葉を使わなくなったのか

(これはもしかしたら僕だけかもしれませんが)まゆってものすごく「運命」って言葉のイメージが強かったんですけどよくよくセリフを見るとそうでもないんですよね.そう勘違いしやすいのも歌詞で使われてるからそのせいでは,なんて意見もこの話をしている時に頂きました.*1

実際に調べてみるとまゆが「運命」という言葉を使っているのはほぼ初期頃だけです.モバだと(カード上では)深紅の絆・CDデビューあたりが最後に使われたカードであって最近では誕生日のセリフ以外言っていません.

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モバでまゆが発した「運命」が含まれるセリフ一覧*2

ここで初期と恋愛シンドローム,深紅の絆での「運命」の使い方について考えてみます.

(初期特訓後 親愛度MAX)

まゆはずーっと○○さんと一緒です。まゆがトップアイドルになっても、ずっとこの運命の赤いリボンは繋がってます♪うふ

(恋愛シンドローム特訓後 アイドルコメント)

まゆのLOVEがいーっぱい溢れたふたりだけの場所…運命の赤いリボンで結ばれたまゆと○○さんだけの秘密ですよ♪絶対に離れたりしないで…まゆの全部をもらって下さい…うふ♪

(初期特訓後 親愛度MAX)

まゆの物語は◯◯さんと出会って始まったの…だから運命の赤いリボンは貴方に繋がってるって信じてるんです。このリボンが絡みついて…貴方と私を強く結びつけてくれるって…

初期や恋愛シンドロームでは「運命」の赤いリボンが「繋がっている」,「結ばれている」と断言しているのに対して深紅の絆では「繋がっていると信じている」に変化しています.深紅の絆ではまゆ自身の弱さを吐露している*3ことを考えると,初期や恋愛シンドロームでは「運命」という根拠がなくとも主張ができる言葉を使うことで「Pが自分のことをどう思っているのか」という不安から目を逸していたのかなと思います.そしてその不安を吐露することが出来たからこそ深紅の絆では「信じている」と言葉が変化していて「運命」という言葉はまゆの願いそのものであったことが読み取れます

だからこそ永遠のキズナ以降では「運命」という言葉を使わなくなったのだろうと考えています.永遠のキズナでは次のようなセリフがあります.

(永遠のキズナ特訓前 マイスタジオ)

まゆとPさんの間には真っ赤な絆が結ばれてます…

今まで「運命」の赤いリボンという(言ってしまえば)根拠のないものを信じていましたが,永遠のキズナでは「真っ赤な絆」(= 深紅の絆で初めてPとまゆがお互いを想って寄り添えたこと)というこれまでのPと一緒に歩んできたことを基にすることが出来ています.つまり,まゆは「Pと自分」が繋がっていることを確認することに「運命」という言葉に縋る必要がなくなったと言えるのではないのかなと.だからこそ深紅の絆からカード上で「運命」という言葉が使われなくなったのだと考えました.

とはいえ「運命」という言葉を否定しているわけではありません.不安を払拭させるために使っていたと先述しましたが,結局のところ(深紅の絆からわかるように)まゆの「結ばれたい」という願いがあった故に使われている言葉であってまゆの心の一部であり本心とも言えます.だからこそ使われるニュアンスが変わっただけで「自称・運命」のように「(飽くまでも)自分はそう思っている(信じている)」という意では使うし,誕生日セリフやエヴリデイドリームでもマイ・スイート・ハネムーンでも「運命」という言葉は使われているのかなと思っています.

ラブデスの「運命」

これは余談です.ラブデスと初期のまゆは同一視したくなるかもしれないけど,そこには決定的違いがあるという話.

デレステでももちろん「運命」という言葉が使われています.「運命」とセリフに登場するのは初期R・ラブデス・イリュージョニスタ!の3つだけです.しかし,実際のところイリュージョニスタ!では仲間に向けた「運命」や「自称・運命」のように今回焦点を当てている「運命」とは意味が異なってきます.また,デレステの初期についてはモバの初期の言動とほぼ同一の意味で使われているとみなしてもいいと思っています.しかし,ラブデスで「運命」という言葉が使われているのが(パッと見)やや異質に感じられます.

ラブデスの登場時期はフィールマイハートの後です.フィールマイハートは「Pとアイドルだから」という関係でも「最高に魅力的になって振り向かせる」という手段をとるカードであって,(運命という言葉を使ってないけど)構図的にはイリュージョニスタ!の「自称・運命」と同じとも言えるでしょう.だからこそ,「運命」という意味の使われ方が初期から変わっているはずなのにラブデスのセリフをパッと見ると「運命という言葉に縋っているまゆ」に見えてしまう,すなわち異質に感じてしまうという話です.特に以下のセリフなんか顕著じゃないでしょうか.

(ラブデス特訓後 ルーム)

運命って信じますよね?ね?

セリフだけ見るとそんな風にも思えるんですけど音声を聞くとそうではない印象を受けます.以下に示す(モバの)初期のまゆとのセリフを聴き比べるとなんとなく言いたいことがわかるかなとは.

(初期 アイドルコメント)

まゆ、Pさんにプロデュースしてもらうために来たんですよ。うふ…ステキですよね…これって運命? ねぇ、貴方も運命…感じますよね? ねぇ? うふ…まゆの事、可愛がってくれますか?

「信じる」と「感じる」という言葉の違いがあるとはいえPに「運命」について問うている構図はほぼ同じです.感覚的なところではありますが声の演技を加味するとラブデスの問いかけはかなり明るくて「私は運命を信じているし,きっと貴方も信じてくれていますよね.信じてくれていると嬉しいです」くらいに対して初期の問いかけはちょっと必死で「私は運命を感じるし貴方も感じますよね?そうですよね?」というやはり不安ゆえの印象が強く感じてしまいます.

上記の感覚的なところを抜きにして言うなれば,ラブデスのカードはまゆの「純粋な恋心」を描いているのであって決して「初期の不安な面」を描いているわけではないと自分は思っています.モバの初期の頃がかなり「Pに対する想い」が(語弊を恐れずに言えば)暴走してた頃で「表出している恋心」がかなり強く描かれていたのでラブデスのように「恋心」を強調をした場合と同一とみなしてしまう恐れがあります.しかしそこには決定的な違いがあって,初期は他の子との比較をしているのに対してラブデスは飽くまでも他の子の存在を認めつつ自分の気持ちを強調しているという点です.

初期だと他の子との話、楽しいですかぁ?だとか邪魔はさせないんだから!だとか他の子達と比べて自分はどう思われているのか,他の子にPを取られてしまわないかという面が見られるのに対してラブデスでは特にそういったセリフがなくむしろ見てください…5人それぞれの…pure love…といった自分以外を見ることを許容しています.これを考えるとモバで言うなればふふ、他の子を見るくらいは許してあげます…少しだけですよ?と言っていた「深紅の絆」のように「まゆとPの信頼関係」が成り立った後の話になります.

また,加えるなら歌詞中に私だけ見てとありますがこれは飽くまでも「好きな人には私だけを見てほしい」という気持ち・欲求の問題であり,それを強制することはありません.これもモバで例えるなら「夏の秘めごと」の思い出エピソード後編の「他の子と話してもいいけど誘ったのは自分なので忘れないでほしい」という構図に近いと言えます.

つまり,初期は(もちろん)まゆの「純粋な恋心+不安」が描かれていたのに対してラブデスでは「純粋な恋心」のみを描いていると言えるのではないでしょうか.先述したように「Pとまゆの信頼関係」が成り立っていることが読み取れるので,ラブですでは初期のように「不安」に思う必要がないからだと思っています.だからこそラブデスで使われる「運命」は決して「運命という言葉に縋っている」から発された言葉ではなく,(本文中にも書きましたが)まゆの「結ばれたい」という願いの意で使われている言葉だと考えています.

おわりに

そもそもこの話が始まったきっかけが「まゆは運命という言葉をよく使っている」という勘違いから始まっているので色々とまゆを知るいい機会になりました.カード上だと全然言ってないなんて全く気づかなかった.なので本記事は自分と似たようなバイアスがかかっている方向けな気もします.

以上で本記事は終了となります.ここまで読んでくださった方はありがとうございました.